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「3グラムなんかになったらお前、シシィが来るたびに舞い飛ぶぞ。大体3グラムって、アオアカキイロのアイデンティティ奪ってやるなよ」

「ほう。火の童たちのアイデンティティだったのか、3グラムは」

「いや、知らない。ごめん、適当言った」

「適当言った罰だ、お姫様抱っこしろ。と、素晴らしく適当な作者が言っておるぞ」

「だから、無理だって。お姫様抱っこなんてしたことないし」

「まったく。黙って聞いておれば、お主はやる前から無理無理言いおって。お姫様抱っこくらい軽々とこなせねば、彩乃に愛想つかされるぞ」

「いや、全然黙って聞いてなかったよね? てか、彩乃ちゃんは関係ないだろ」

「仕方ない。お主が出来ぬというなら、私がするしかあるまい」

「はっ!?」

「お主と私は、主人公とヒロインゆえ、互いに助け合わねばな。主人公が出来ぬ分野は、ヒロインが受け持つ。足して一になってこそ主人公とヒロインだ」

「………フィー、お前。なんか、いいこと言ったみたいな顔してるけど、全然いいこと言ってないからな? つうか、それこそ無理だろ。俺、普通に重いし」

「案ずるな。私はヒロインだ」

「いや、意味分からないから」

「だーかーら。私は、精霊奇譚のヒロイン、つまり、精霊なのだ。我らにとっては、重力なぞ子供の玩具と同じだ。重かろうと軽かろうと関係ない」

「あ、そうなんだ……って、ちょっと待て。本当にしようとするな。無理だって! いや、無理じゃないかもしれないけど! ちょっ、やめて!」

「喧しい。作者が早うせいと五月蝿いのだ。大人しく抱っこされろ」

「いやだ!」

「断る」

「わあああ!」

「な? 大丈夫だと言うたであろう?」

「……………」

「どうだ、真生、お姫様抱っこされた気分は?」
「……………」

「どうした、気持ち悪い顔して。せっかく私自らが、お姫様抱っこしてやっているというに」

「………うん。下ろして、今すぐに」

 

つづき→

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